Seminar (Psychology)
卒業論文について
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  卒業論文について

 出口研での卒業論文の進め方などについて,簡単に紹介します。このページには,私の価値観が反映されている部分が,多かれ少なかれあるかと思います。このため,他の研究室での進め方とは違っていることもあり得ます。「とりあえず,出口研は,こんな感じらしいな…」くらいに考えてもらえれば幸いです。


1.研究テーマ

 「研究テーマ」は,基本的に自分自身で考えましょう。私の方から「○○について研究してください」と,テーマを指定することは,基本的にありません。もちろん,みなさんが研究テーマを決めるために必要なお手伝いはします。ただし,まずは「○○について調べたいのですが…」などと自分自身でテーマの候補を用意して,主体的に取り組むようにしてください。私の指導能力を超えるもの(「『ブラックホール』の構造について調べたいです」「『タイムマシン』が作りたいです」など)でなければ,できるだけ希望するテーマで研究を進めていけるように留意します。
 ちなみに,私の研究テーマは,「規範逸脱行動」で,質問紙調査やコンピュータ・シミュレーションといった方法を使って研究をしています(詳しくは,「研究室」を見てください)。ただし,私の研究テーマと同じものを選択する必要はありません。実際,これまでの卒業論文では,「ストレス」「友人関係」「サークル」「学級開き」「反社会的行動」など,多種多様なものがテーマとなっています。また,(私と同じような)コンピュータ・シミュレーションを使った研究をする必要もありません(私がこれを書いている時点(2017年11月)で,コンピュータ・シミュレーションに関する研究を卒業論文で行った人は1人もいません…)。
 卒業論文の執筆は,大学院進学等の進路をとらない人にとっては,これまでの学生生活の締めくくり的な活動になると考えられます。興味関心を持って取り組めるテーマを,自分自身で見つけてください。自分自身で「検討すべき問題」を見つけ,「検討するための方法」を考え,データを収集・分析し,「問題に対する答え」を探っていく,という卒業論文執筆に関する一連の活動を通して得られた経験は,大学を卒業して教師等になってからも,様々な場面で役に立ってくれると思います。


2.研究室での打ち合わせ

1)まずは自分で考えてから,打ち合わせに来ましょう
 例えば,以下のような質問が出来るように準備してから,打ち合わせに来てくれると嬉しいです。
  「○○という本を読んだのですが,○○というところが○○という理由で
   面白いと思ったので,これを卒業論文のテーマにしたいのですが…。」
  「研究計画を立てたのですが,これで大丈夫ですか。○○の部分を
   どうしようか悩んでいるのですが…。」
  「○○について調べたら,○○という本に○○と書いてあったのですが,
   これは○○という理解の仕方で大丈夫ですか。」
  「○○について分析した結果から,○○と考えたのですが,
   どのように思いますか。」


 逆に,以下のような質問をされると,少々反応に困ります。
  「卒業論文のテーマは何にすればいいですか〜。」(→自分で考えましょう。)
  「研究計画はどうすればいいですか〜。」(→まずは自分で考えましょう。)
  「○○って何ですか〜。」(→多少は自分で調べましょう。)
  「何が楽なテーマですか〜。」(→いろいろと考え直しましょう。)


2)打ち合わせに来る際は,できるだけレジュメを作りましょう
 口頭だけで説明されても,適切な助言をすることは,なかなか難しいです。自分自身の思考の整理にもなるので,調べたことや考えたこと,自分の疑問点などを,文章にして持ってきてください。うまくまとめられない場合は,「A4サイズの用紙1枚に手書きで書いたメモ」のようなものでもかまいません(毎回「メモ」だと困りますが…)。
  • ただし,「何をすれば(書けば)良いのか,どうしても分からないよ〜」といったときは,とりあえずレジュメ無しで来てくれても結構です。


3)教員が言ったことが「間違っている」と思ったときは,
 遠慮せずにそう伝えましょう

 「1)」に書いたように,みなさんが自分でいろいろと調べ,考えてから研究室に来た場合,「教員よりも学生の方が,打ち合わせ内容について詳しく知っている」といった状態になることが出てくるかも知れません。特に,「収集したデータの分析結果」についての報告やディスカッションをするとき等は,このようなことが,起こりやすいと考えられます(…というよりも,これから報告される「分析結果」を,報告者(学生)以上に教員が知っている,ということは通常ありえないので,ほぼ必ず,このような状況になるかと思います)。
 そして,「みなさんが調べたり考えたりしたこと」を,教員が正しく,かつ十分に理解できていない場合,もしかすると,みなさん(学生)の意見の方が,教員よりも優れたものとなっているかもしれません。また,みなさんの報告を教員が誤解したまま打ち合わせを進めると,「間違ったアドバイス」をしてしまう可能性も考えられます。このような時は,遠慮せずに「それは,ちょっと違うような気がします」「私は,むしろ○○と思うのですが…」等と言って,相手(教員)が間違った(ないし「あまり妥当ではない」)ことを言っている(と自分が考えている)ことを伝えましょう。
 「教員が間違っている」ことを,その教員に伝えるには勇気がいるかも知れません。しかし,教員にとっては,「学生の報告を誤解したまま『間違ったアドバイス』をしていることに気づかず,学生もそれを指摘してくれない」のは悲しいことです。また,議論がかみ合わないまま打ち合わせを続けると,お互いの時間を無駄にしてしまうことにもなりかねません。「相手が誤解しているかな?」と思ったら早めにそのことを伝えて,有意義な打ち合わせができるようにしましょう。
  • 教員の方も,できるだけ誤解をしないように一生懸命報告を聞いているつもりですが,その場で1回聞いただけで100%完全に理解することは,なかなか難しいです。このため,「報告者」(学生)の方も,自分の報告が「誤解」されてしまうこと等を防ぐために,できるだけ(相手にとって)分かりやすいレジュメを作り,分かりやすく説明してもらえるとありがたいです。教育実習にいったときに,「どうすれば,子どもたちに授業内容を分かりやすく伝えられるかな…?」と,いろいろと考えてプリントを作ったり,授業内容の説明の仕方を工夫したりしたと思います。研究室での打ち合わせの際は,「プリント」を「レジュメ」に,「授業内容の説明」を「打ち合わせ内容の説明」に置き換えてみると,分かりやすい報告ができるかも知れません。
  • 「学生の授業内容の理解度を教員が把握すること」を目的とした「レポート」等を読むときは,基本的に教員の方が学生よりもレポートのテーマに関する事項を詳しく知っていると思われます。しかし,卒業論文の場合は,上に書いたとおり,必ずしもそうでないときがあることに留意してください。

4)おまけ:「教員(私)の台詞」と「卒業論文の進捗状況」について

 一概には言えませんが,以下のような感じで考えてもらうといいかもしれません。

 危険度:低(たぶん順調)
  「これに関する本を探して,○○について考えてみると面白いかも〜。」
  「○○と○○の違いについてはどう思う?」
  「○○について検討するには,どんな分析をすればいいと思う?」
  「なぜ,この分析結果から○○と考えたのかな〜?」


 危険度:低〜中(少々微妙)
  「○日までに,この本のこの章を読んで,○○について調べてみると
   いいかも。」
  「○○について調べるには,○○分析をするといいかも。」


 危険度:中〜高(とても微妙) ※締め切り間際は特に注意!
  「○○の意味は○○ということなんだけれども,この本の○○ページに
   ○○について書いてあるから,○日までに読んで,○○と○○の関係
   についてまとめてみて。」
  「○○日までに,○○について○○分析をして,このレイアウトで表を
   作ってみて。」
  「この分析結果から○○と考えられると思うから,この本のこことこの
   部分を読んで,○○について書いてみて。」

  • 基本的に,「学生自身に考えさせる質問」が出てこない場合,あまりいい進捗状況ではなくなっている可能性があります。そうならないように,しっかりと計画的に準備をして進めましょう。


3.学生同士でのディスカッション

 卒業論文は,自分(学生)と指導教員だけで取り組むべきものではありません(たぶん)。他の学生に自分が考えている(迷っている)ことを伝えたり,逆に,他の学生が研究していることを聞いたりすると,自分だけでは思いつかなかった様々なアイディアや「視点」が得られることもあると思います。積極的に,他の学生と,卒業論文について話してみてください。また,もしも自分が話しかけられたら,その人の研究について一緒に考えてみましょう。他の人の研究について考えることは,自分の勉強にもなるはずです。


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