Compulsory Science No.80




「Small Worlds」
 


  _今回の内容は、大阪教育大学附属池田小学校、孕石泰孝先生からの紹介によるものです。

 _Small Worldsつまり小さな世界です。歌にもあるように思ったよりも世界は小さくて、われわれはネットワークの中で生きているという考えです。これは、人間関係だけではなく、インターネットのウェッブ、細胞の中で行われている化学反応、英語の構造、空港間のつながり、電力網などいたるところで見られるというものです。  

_基本的な考えは、私達は、6人の人を介せば、世界中の人達とつながることができるというものです。もしあなたが100人を知っているとします。それぞれの100人は、また100人を知っているので、この段階での広がりは10000人(1万人)となります。次の段階では、100万人、次は、1億人、その次は100億人となります。現在の世界の人口は約60億人ですので、十分な数ということになります。  

_私は、先日こんな経験をしました。ニューヨークのある大学を訪問することになり、そこの担当者と会う計画を建てました。もちろん知り合いは誰もいませんでした。そのことを8月に知り合ったばかりのニューヨークの中学校の理科の先生に話したところ、私が訪問する部局長を知っているとのことで、すぐに会う約束を取り付けてくれました。私は、たった1人の人を介しただけで、日本から遠いニューヨークの大学の担当者と直接会うことができたのです。  

_しかし、この経験は、特殊だと思えるかもしれません。100人を知っていると言っても、その100人は、それぞれ違う分野の人ではなく、同じ分野の人が多いので、広がりが少ないではないかと考えることができます。これはクラスタリング(clustering)と呼ばれるもので、確かに知っている100人はランダムに広がっているのではなく、かなり似たような人がいますし、彼らは、あなたとかなり親しい人達(強い絆)であり、よく一緒に活動する人達でしょう。しかし、なかには、めったに会わない人(弱い絆)も含まれていると思います。このめったに会わない人があなたの世界を一挙に広げてくれるのです。ランダム(random)な広がりです。  

_このように、私達の人間関係は、クラスタリングとランダムの組み合わせにより構成されています。空港網では、クラスタリングの中心をなしているのがハブ(hub)空港です。ハブ空港を経由し、遠距離の飛行を行うことで世界中がつながっているのです。  

_これを学習に当てはめたらどうなるでしょうか。各教科の学習をクラスタリングととらえ、教科間のつながりをランダムととらえると、学習したことが一つの世界、まとまりとなるのではないでしょうか。さらに、教科の学習を日常生活とつなげると教科の学習が自分のものになる、自分の世界になるということではないでしょうか。


【参考文献】

「複雑な世界、単純な法則」Mark Buchanan / 阪本芳久、草思社、2005
「スモールワールド・ネットワーク」Duncan Watts / 辻竜平・友知政樹、阪急コミュニケーションズ、2004


「まぐまぐ(電子書店)」http://www.mag2.comに掲載
読者数 1500





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