Compulsory Science No.71




「生物時計Biologcial Clock」
 


     生物時計(Biologcial Clock)という用語を聞いたことがあるでしょう。
 関連するものに、生物季節(Phenology)、体内時計、光周性(Photoperiodism)、概日リズム(サーカディアンリズムCircadianRhythm)があります。これは、特別なこととのように思われていますが、実は、生物の基本的な性質なのです。生物時計を持っていない生物を探すことが難しいと言われているぐらいです。
 生物は、1年を単位とする年周リズムともいうべき変化を示す場合もありますし、女性の生理のように月単位で変化を示す場合もあります。さらに1日単位で変化するものもあります。これらは、基本的に外界の明暗環境に関係なく日周性を示すものをさしています。
 ヒトの概日リズムは、25時間であることが知られています。これは、外界から遮断された状態で生活すると、25時間周期で生活するようになったという実験から確認されました。6ケ月にも及ぶ実験でした。ヒトは、朝、目覚めて太陽の光を浴びることで、この周期がリセットされているのです。赤ん坊の場合、生まれてすぐは、明確な周期は認められませんが、次第に周期性が見られるようになり、生後26週間もすると、大人と同じような周期で活動することが調べられています。
 体温も周期性があります。朝と夜低くて、日中は高くなっています。ほぼ1℃の差があります。ですから、自分の体温を測るときに、何時の時点で何度であるかを知っておくことが大切です。朝の36.5℃は、微熱であっても、昼の36.5℃は微熱ではないということもあります。
 しかし、不登校の子は、この体温のリズが乱れているのです。一日中、体温の変化があまりありません。不登校の子供達は、体内時計が狂っており、持続的・慢性的な時差ボケ状態に陥っていることが分かったのです。この原因は、夜も昼と同じような明るい照明が輝き、24時間活動している人間社会の状態を反映したものであるとも言えます。  体内では、メラトニン、コルチゾール、βエンドルフィンといったホルモンの分泌のバランスが崩れていることによるものです。
 これを治療するのに、高照度光治療が行われています。個室内で、朝6時から5000ルクスの強い光が照射され、9時には少し弱くなり、午後には次第に柔らかい光に変わるのです。この光治療により、生活リズムが整ってきて、次第に活力が戻ってくるそうです。この他にも、ホルモンの分泌を調整する治療もあるそうですが、光治療が一番有効であるとのことです。

【参考文献】
(1)「生物学辞典」八杉龍一ら;岩波書店,1996年
(2)「不登校はなぜ起こるか?」三池輝久/遺伝2004年5月号;裳華房
(3)「生物時計」ア−サ−.T.ウィンクリ−/鈴木善次・良次訳;東京化学同人,1992年
 

「まぐまぐ(電子書店)」http://www.mag2.comに掲載
読者数 1500





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