Compulsory Science No.56




「がんで死ぬのはもったいないAnti cancer drug」
 


 The usage of an anti cancer drug is introduced in this book. The author insists that there are rare anti cancer therapy in Japan, in order to cure the cancer it is necessary to use the anti cancer. The situation of the operation of cancer is also introduced.

 この本は、抗癌剤治療について述べたものです。抗癌剤と聞くと、副作用という言葉をすぐ思い浮かべます。生物実験で、マイトマイシンCという抗癌剤を用いることがあります。これは、DNA複製阻害剤として有名です。単純に考えれば、DNA複製を阻害するのであれば、癌細胞に限らず正常細胞も増殖が阻害されます。だから、副作用が出ることはよく理解できます。ただ、正常細胞より癌細胞の方が増殖の速さが速いので効果があるのでしょう。このことから抗癌剤治療は怖いというイメージしか持っていませんでした。

 著者によれば、日本には腫瘍内科医がほとんどいないということです。これは、抗癌剤治療が充分に行われていないことを意味しているようです。日本では外科医が抗癌剤治療を行っているようです。そして、そこで使われている抗癌剤は、UFTとかフルツロンという5FU系経口抗癌剤だということです。これらの抗癌剤が売られ使われているのは日本だけだそうです。この薬の長所は、副作用がないことです。決して効果があるということではないそうです。世界で売れている抗癌剤は

@タキサン

Aパラプチン

Bイリノテカン

Cジェムザール

DUFTとのことです。

例えば、4位のジェムザールは、膵臓癌の治療の第一の選択肢だそうですが、この抗癌剤を常備していない病院が日本には多くあるそうです。膵臓癌は日本では、年間2万人もの人が罹っているそうです。しかも、膵臓癌の治癒率はとても低く、診断がついてから3ヶ月以内に半数が死亡し、一年以内に90%が死亡する怖い癌です。なぜこのようなことが起こるかというと、病院も在庫を抱えたくないからだそうです。総枠何千種と薬の種類を決めていて、医師単独では、使う薬の購入を決定できないそうです。しかも、その薬がもし、認可されていない薬だと法的には違法となるわけで、簡単には使えないそうです。著者が勤務している病院にはあらゆる抗癌剤が用意されているそうです。これはとても珍しいことのようです。

 抗癌剤の副作用には2種類あるそうです。それは、患者が自覚する副作用と自覚しない副作用です。自覚する副作用は、脱毛、食欲不振、嘔吐、倦怠感、下痢、口内炎であり、自覚しない副作用は、肝機能障害などです。確かに抗癌剤には、1〜2%の副作用死があるそうです。しかし、進行癌で余命3ヶ月などと言われた患者さんが著者の抗癌剤の治療により1年、2年と寿命を延ばしたことを考えるとこの危険率が高いとは言えないようです。

 また、この本では、手術の様子も紹介されています。外科医の優秀さは評判では分からない。外科医自身が手術の実際を見ないと分からないとしています。ある先輩の外科医の手術を見たとき、癌の患部を触った手袋のままで手術を続行しようとしたので、注意したところ、その外科医は、手袋を洗ったままで手術を続行したそうです。癌に汚染された可能性のある手袋は廃棄して新しい手袋で手術を続行するのが正しいやり方だと著者は述べています。これは当然でしょう。

そのままの手袋で手術を続行した外科医は、肉眼で確認することのできない癌細胞への認識に欠ける人だと思われます。目で見えないものを対象に研究した経験のある人なら人間の肉眼の認識能力のはかなさを知っているはずです。彼には、そのような経験が少なかったのでしょうか。著者は物理学と医学の双方を学んでいます。物理学では遺伝子の物理学的特性を微弱な電流で測定していたそうです。目に見えないものを対象に研究した経験があるからでしょうか。手術の際には、細心の注意を払って癌細胞が飛び散らないよう行っているそうです。

 私の知っている人も何人も癌で亡くなっています。癌の研究者も癌の研究者の奥様も癌で亡くなっています。民間療法はよく新聞などで宣伝されていますが、このような地道な治療の様子はなかなか分からないものです。著者は、情報公開を促進している医師だそうです。





 

※「がんで死ぬのはもったいない」平岩正樹著/講談社2002年

読者数 1500





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