Compulsory Science No.54




「死因The Cause of death」
 


 It is said that it is difficult to decide the real cause of death. It seems that direct cause of death is infectious disease. The typical example is pneumonia.

 医師が死亡診断書を書きますが、その死因を特定することは至難の技だと言われます。なぜなら、多くの場合、人が死ぬときは、多くの病気が関係しているからです。ガン(cancer)や脳梗塞は、間接的な死因であることが多く、直接的な死因は、肺炎、腎不全ということが多いようです。例えば、脳梗塞、心筋梗塞、肺ガンを併発していて、最終的には肺炎で亡くなったとします。この場合、死因を脳梗塞と医師が死亡診断書に記入すれば、統計上は脳梗塞のみが浮かび上がってくることになります。死因を特定しようとすれば、解剖することが必要ですが、解剖されることは、そう多くないでしょう。

 肺炎は、死因の第4位で全体の10%未満を占めますが、感染症の代表的なものであり、陰の死因第1位とも言われます。あらゆる病気の終末は、体力、免疫力の低下から人体は、細菌、ウイルスに侵される危険性が高くなります。肺(lung)は、肺胞(alveoli)と呼ばれる小さな袋から構成され、空気と触れる面積が広くなっています。それだけ、細菌の感染を受けやすくなっているのです。体内では、胃(stomach)も外界と接していますが、胃液(gastric juice)により保護されています。それでも、細菌感染により潰瘍(ulcer)やガンになることがあるのですから、防御機構を持たない肺は、細菌の攻撃を受けやすいのです。肺炎になると、肺胞が機能を果たさなくなり、酸素を取り込むことが次第に出来なくなってしまいます。やがて呼吸困難になり死に至るわけです。肺炎の原因は、細菌の他に、薬、放射線もあります。呼吸困難は事故によっても起こります。不完全燃焼による一酸化炭素中毒がよく知られています。一酸化炭素は無味無臭の毒ガスですが、タバコを吸うことで血中の一酸化炭素濃度は一気に上がります。喫煙者は慢性的な一酸化炭素中毒とも言えるとのことです。体が低酸素状態になって、めまいがして気持ちがいいのかもしれません。

 脳梗塞などで寝たきりになると、床ずれがおきます。床ずれは皮膚の表面だけのことではなく、骨まで細菌が侵入し、骨髄炎や敗血症となり死に至ると言われています。これも感染症です。元気であれば、すぐに治る皮膚表面のできものが、体力、免疫力が衰えると死につながるわけです。私たちの身の回りはいかに細菌に満ちているということでしょうか。毎日、こうしている間にも細菌と我々の体は戦っているのです。

 病気の末期症状の代表としては、腎不全があります。腎臓(kidney)が働かなくなるということです。医師は、1時間あたりの尿の量によって患者の状態を診断するとも言われています。腎臓の働きが悪くなると、途端に老廃物が体の中に貯まってきます。これは、主にタンパク質の老廃物、尿素、クレアチン、尿酸です。今は、人工透析によって、腎不全がかなり解消されるようになったそうです。しかし、長年行うと、針を刺すことが出来る動脈がなくなるということもありますし、心臓にも負担をかけることにもなります。

 死因を考えることで、健康な状態を考えることができるのではないかと思います。




 

※「人間はどうやって死んでいくのか」米山公啓/青春出版社 2002年

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