コムパルソリイ・サイエンスNo.45




「アレロパシー/他感作用(Allelopathy)」
 


 Allelopathy involves the inhibition of the growth of one species by another. As the examples, it is known that it is difficult to grow the another plant near the mugwort and the walnut.

 Allelopathy(アレロパシー)って聞いたことがありますか。日本語では、他感作用と訳されています。上手い訳ですね。でも、訳さずにそのまま使っている場合も多いようです。"allelon"というのが、互いに、という意味で、"pathos"が苦しむという意味があって、それらを組み合わせた語のようです。

 具体的には、ヨモギの群落の近くには他の植物は育たない、クルミの樹の下では、ナス、トマトが育たないといった例などです。植物が化学物質を出して、同種や異種の発芽や生育を阻害しているのです。植物同士も場合もあるし、植物と動物、細菌との戦いもあります。 アオカビが他のカビや細菌の増殖を抑制することが発見され、抗生物質(antibiotics)として利用されていますが、これも広い意味では、アレロパシーなのでしょう。この他の例としては、バラの匂いは、殺菌薬剤のフェノールの7倍もの殺菌力があるそうです。だから、バラの花には虫が寄り付かないのだそうです。レモンの皮1枚をビンの中に入れておくとショウジョウバエは死んでしまいます。また、森林の匂い物質は、phytonchide(フィトンチッド)と呼ばれ、ヒノキが出す、ヒノキチオール、マツが出すピネン、テルピオールも殺菌力がつよいので、森林は細菌が少ない状態に保たれているとのことです。

 植物は、動くことができないので、敵から襲われないように何らかの手段を持たないと生きていけません。ヒイラギの刺は、物理的に防御している例として挙げられますが、そのように目に見える防御だけでなく、化学物質を用いて防御しているのです。それらの一部を薬などとして人間が利用しているというわけです。昔から使われている例としては、クスノキの樟脳があります。これは、虫除けとしてタンスなどに入れられていたわけです。けれども、クスノキを好んで食べるアオスジアゲハという綺麗な蝶もいます。この場合は、アオスジアゲハは、他の虫が食べないクスノキを食べることでクスノキを独占状態にできるわけです。クスノキと同じ仲間にゲッケイジュがあります。こちらは料理でロリエとして利用されています。クスノキもゲッケイジュも葉に独特の匂いがあります。料理では、臭み消しとして使われています。ヒトに対する匂いとしては、反エロチック臭として分類されるようです。

 このアレロパシーを比較的簡単に実験できる方法として、アルファルファを水につけて、その水でライ麦やクローバーの種を栽培してみるといった方法があるそうです。興味がある人はやってみて下さい。

 



 
※Daniel Barstow "Encouraging Student Biological Research through Teacher-Scientist Partnership" 1996

※「トマトはなぜ赤い」三島次郎/東洋館出版/1992

※「生物たちの不思議な物語」深海浩/化学同人/1992

※「味と匂いのよもやま話」高木雅行/裳華房/1994


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