コムパルソリイ・サイエンスNo.26




「オリンピックを10倍楽しむ?!」  
 いよいよオリンピックが始まりました。皆さんは、どの競技を楽しみにしていますか。

 女子マラソンには、期待がもたれていますね。男子マラソンも以前は強かったのですが。さて、マラソン競技のトップランナーは、どれくらいのスピードで走っているのでしょうか。我々は、それに対して、どれくらい対抗できるのでしょうか。男子マラソンだと42.195kmを2時間10分以内で走りますね。時速約20kmというところです。時速20kmは、分速0.3kmつまり300mです。分速300mは、秒速5mです。ということは、50mを10秒で走っているということです。学校の体育で、50m走を測ったことがありますね。男子だと7、8秒、女子だと8、9秒が平均でしょうか。それよりちょっと遅いくらいです。でも、そのスピードを40km以上も維持しないといけないのです。考えられないですよね。もちろん、50m走の場合は、速度が0からのスタートなので、助走があれば、もっと楽に速く走ることは可能でしょうが、維持することは無理でしょう。だから、マラソン中継なので、たまに観客が走っていますが、すぐに追いつけなくなるのですね。

僕は、フルマラソンに2度挑戦したことがあります。そのときに、招待選手が折り返すのを間じかに見ました。信じられないスピードで駆け抜けていったので、目を疑ったものです。もちろん、すれ違ったときのスピードなので、速く感じるのは当たり前といえばそうですが、すれ違うこちらは、歩くようなスピードでしたから、それほど気にしなくてもいいでしょう。

 走り幅跳びはどうでしょう。カールルイスが活躍したときは、100m、200m、400mリレー、走り幅跳びで金メダルを取って驚いたものです。そのときに、走り幅跳びには、スピードが必要だと改めて思いました。高校の物理の教科書を見ると、放物運動のことが載っています。これは、斜めに上方に投げた物体のことを例にあげていますが、人間を例にあげて走り幅跳びを考えるとどうなるでしょう。教科書では、水平方向の距離は、

X=V0cosθ・t

となっています。Xが距離でVが初速度、つまり、飛びはじめの速度です。cosθのθは角度、tは時間を表しています。
 垂直方向の高さは、

Y=V0sinθ・t-0.5gt2

となっています。gは重力加速度です。通常9.8として計算します。これらの式を変形すると、斜めに上方に投げた物体の水平方向の到達距離lは、
l=V02sin2θ/g
となります。仮にカールルイスなみに、100mを10秒で走って、45度の角度で飛び上がったとすると、到達距離lは、10.2mとなります。現在の世界記録約9mを越えることになります。実際は、人の体は複雑だし、飛ぶ姿勢もあるので、こうはいきませんが。垂直方向の式で、高さを求めると、約2mとなります。かなり高く飛ばないと遠くに飛ばないことも納得いきますね。

 走り高跳びの場合はどうでしょう。2mの高さを飛ぼうとすると、どれくらいの初速度で真上に飛び上がればいいでしょうか。物理の教科書に載っている、鉛直に物体を投げた場合の式を使えば、

 V02=2gh

の高さを表すhに2を代入すると、V0(初速度)は、6.3m/sとなります。この速さで飛び上がると、2mまで到達するのです。水平方向だと秒速10mの人間が垂直だとこの速さになるのですね。重力は大きい。

 ここで紹介した式は、基本的には、X=Vt、Y=0.5gt2の式から導き出すことが出来ます。

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※「物理TB」西川哲治ら/大日本図書 1998年

※「物理の樹」木下是雄/晶文社 1995年



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