コムパルソリイ・サイエンスNo.24




「遺伝病」  
 遺伝病と聞いて、どんな病気を思い浮かべるでしょう。色盲、血友病、ダウン症、フェニルケトン尿症、こんなところでしょうか。妊娠したときに、まず、心配されるのがダウン症でしょうか。これは、よく知られているように母親の年齢と関係があります。
 20歳---1/1925
 25歳---1/1205
 30歳---1/885
 35歳---1/365
 40歳---1/110
 45歳---1/32
 50歳---1/12

 ダウン症は、21番目の常染色体の不分離が原因です。親は1対2本の染色体を持っています。それが卵や精子を作るときに1本づつに分かれなければならないのが、2本と0本に分かれてしまうの原因です。卵と精子が受精すると、通常は1+1=2本になるのですが、染色体不分離だと2+1=3本と0+1=1本になるのです。1本の場合は、流産してしまいます。3本の場合も多くは流産しますが、生まれてきた場合、ダウン症となるのです。出産するのは、5分の1程度だと言われます。ヒトは、22対44本の常染色体と2本の性染色体(XX、XY)あわせて46本の染色体を持っています。それがダウン症の場合、47本となります。ダウン症の原因は、この他に、転座と言って、染色体の一部のみが付いた場合もあります。残念ながら、今は、根本的な治療法はありません。

 遺伝病の対処方法として有名な成功例がフェニルケトン尿症です。これは、体内にフェニルアラニンやフェニルピルビン酸などの以上物質が蓄積し精神遅滞となるものですが、治療ミルクで育てることにより、障害を持たずに成長することが出来ます。日本では、1977年以降、次の先天性代謝異常症の新生児マススクリーニング(診断調査)を行っています。
 フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ヒスチジン血症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症、先天性副腎過形成症、クレチン症

 これら以外には、性染色体異常の遺伝病も知られています。
・ クラインフェルター症候群---XXY---1/1000---男性だが第二次性徴の発達乏しい。
・ ターナー症候群---X---1/4000---女性だが子宮、卵管、膣など発育不全。
・ XYY男性---XYY---1/1000---高身長。たまに、反社会的行動あり。

 染色体異常は、多くの場合、流産となります。だいたい染色体異常の93%が流産、死産となり、出生するのは4%だと推定されています。
 これらの遺伝病の治療として、期待されているのが遺伝子治療です。これは、骨髄から血液を抽出し、実験室で、正常な遺伝子を組み込み、体内に戻すというものです。日本では、ADA欠損の患者さんに行われましたが、続けて実施されていないようです。

 子供が生まれてからも心配が絶えませんが、生まれる前も心配ですね。

 読者数 1000



 
※ 「人間の遺伝学入門」今泉洋子編/培風館 1994年

※ 「人のための遺伝学」安田徳一著/裳華房 1994年

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