コムパルソリイ・サイエンスNo.22




「ヒトの遺伝」  
 遺伝子組み替え食品のことが、この頃話題になりますが、われわれヒトの遺伝に関して、どのくらい知られているでしょうか。イギリスの中等レベルの教科書には、下記のようなヒトの遺伝の形質が紹介されています。

主に優性---------------主に劣性

広い頭蓋骨-------------狭い頭蓋骨
丸い顔---------------長い顔
褐色の眼-------------青い眼
長いまつげ------------短いまつげ
二重まぶた------------一重まぶた
黒い髪---------------赤い髪
赤い髪---------------金髪
豊かな耳たぶ-----------小さい耳たぶ
えくぼ----------------えくぼなし
しみあり--------------しみなし
くせ毛---------------くせ毛なし
PTUを感じる-----------PTUを感じない
舌を巻くことが出来る----舌を巻くことが出来ない

 遺伝に関しては、言葉の響きから誤解を招くことがよくあります。優性、劣性という言葉からして、あまりいい感じはしません。確かに形質としては、優性の遺伝子が発現しますので、分かりやすいのですが、表現に抵抗がありますね。

 これらの中で幾つかを取り上げて説明しましょう。まず、二重まぶたですが、これは、生まれてすぐに発現するというより、年をとるにしたがって発現するというものです。耳たぶは、豊かな耳たぶとは、奈良の大仏や徳川家康の肖像画を思い浮かべてもらえば分かりやすいでしょう。耳たぶが頬から離れているとも言います。小さい耳たぶとは、野球解説者の江川卓氏のような耳たぶです。

 PTUは、Phenyotioureaもしくは、PTC(Phenyltiocarbamide)という薬品をろ紙に浸したものをなめてみて苦味を感じるかどうかというものです。これも言葉がよくありませんが、感じないヒトを味盲と言います。これは、この薬品に関してだけのことで、一般的に味覚がおかしいということではありません。舌を巻くとは、舌を筒のように丸めることが出来るかどうかということです。

 遺伝とは、親から子へ形質が伝わることを意味しています。それで、この表の形質を見て、両親とも舌を巻くことが出来るのに、自分は巻くことが出来ない。自分は、誰の子だ、などど早合点しないで下さい。これは、表現形質です。遺伝形質ではありません。血液型の遺伝の例に見られるように、両親の血液型がA型でもO型の子供が生まれることはあります。それは、両親の血液の遺伝子型がAOの場合です。この場合は、子供の可能性としては、遺伝子型AA、AO、OOの3つが考えられます。そして、表現型はA型とO型の二つです。だから、表現形質だけを見ると、あたかも遺伝していないように見える場合もあるのです。



 
※Nuffield Secondary Science 2 Continuity of life 1971

読者数 900




トップページへ戻る