コムパルソリイ・サイエンスNo.21




「体重と衝撃」  
 人間が運動しているときに、どれくらい衝撃があるでしょう。軽く走っている状態では、足の先の方では、体重の約3倍の力が働いているそうです。だから、体重60kgの人は、約180kgの力がかかっていることになります。足は、アーチ状の形をしていて、くるぶしのところが支点の働きをしているてこだとも考えられます。そうすると、足先からくるぶしまでの長さは、かかとからくるぶしまでの距離のほぼ2倍ですから、かかとには、体重の約6倍、約360kgの力がかかることになります。

 てこの原理---力×支点からの距離 が等しい。
 かかと=360×1
 足先=180×2

 これは、軽く走っている状態の場合です。バスケットボールやバレーボールのようにジャンプして着地した場合の衝撃は、もっと大きいでしょう。高く飛べばそれだけ、位置エネルギーを持つことになります。

 位置エネルギー=質量×重力加速度×高さ

ですから、体重が重いほど、高さが高いほどエネルギーが大きくなります。単純にこの式を当てはめてみると、体重60kgの人が高さ1mの高さにいるときと、体重1kgのネコが高さ60mの高さにいるときは、同じエネルギーになります。

 実際に、体重30gのハツカネズミを6階建てのビルの屋上から落としても大丈夫だったそうです。それに対して、体重10tのアフリカゾウは、歩いていても骨折することがあるそうです。歩いていても身長が上下することは、前回紹介しましたね。また、体重が重くなればそれを支えるために、足が太くならなければなりませんし、足を曲げることが難しくなります。だから、ゾウの脚は太くほとんど曲げることがありません。脚をまっすぐにして歩いています。

 だから、人間の場合も、体重があまり重い人は、飛び跳ねる球技はあまり向いていないかもしれません。まだ若いうちは、筋肉や腱に弾力性があるので、衝撃を吸収できるかもしれませんが、年をとると、筋肉や腱の弾力性が衰えますので、危険です。どうしても続けるなら、非弾性シートを使ったシューズなどを履く必要があるでしょう。

 非弾性シートとは、衝撃を吸収するシートです。普通大きく跳びはねるスーパーボールも非弾性シートの上に落とすと、あまり跳ねなくなります。これは、シューズに使われているほか、グローブ、ミットなどの野球用品やスピーカーなどのオーディオ機器のハウリング防止に使われています。



 
※「ゾウの時間、ネズミの時間」本川達雄著、中公新書 1992年

※「生物と運動」R.マクニール.アレクサンダー著/東昭訳、日経サイエンス社 1992年

読者数 900




トップページへ戻る