コムパルソリイ・サイエンスNo.18




「バクテリオロジー」  
 2号続けて、食中毒関係の話題でしたが、結局、バクテリオロジー(Bacteriology)「細菌学」を学ぶことが大切だということなのです。バクテリオロジーというととても難しい学問のようですが、これを学んでおくことが、身近な食中毒を防ぐ基本となるのです。どういう状態で細菌が増えるかということを実験を通して学ぶことは、日常の生活に大きく役立つはずです。

 まず、滅菌です。一般に実験室では、オートクレーブという圧力釜の蒸し器みたいなものを用いて滅菌を行います。この条件は、120℃20分です。この条件で滅菌を行うと、ブイヨンを主体とした栄養十分の培地であっても、栓を開けない限り、常温に置いていても半永久的に腐りません。これを始めて見た人は驚くでしょうね。ちょっとでも栓を開ければ、透明な培地は濁ってきて、次第に色とりどりのカビが繁茂するようになります。100℃で、滅菌を試みようとすれば、300分以上の時間がかかります。それでも充分ではありません。だから、家庭の場合は、加熱したらすぐに食べることが肝要です。時間を置けば、その間に細菌はどんどん増えることになります。    

 次に、細菌は、基本的に上から降ってきます。カビなどの胞子もそうです。ですから、滅菌済の寒天培地(ぺトリ皿)を扱う基本は、裏返して操作をすることです。蓋を開けるときは、裏返して開けます。そうすると、ほとんど菌に汚染されることがないのです。オートクレーブで滅菌したあとは、どうしても蓋に水滴がつきます。この水滴を蒸発させないと次の操作がうまくいきません。どうやって乾かすかというと、蓋を上に向けて、その上に寒天培地がついた底を裏返しておいて乾燥させるのです。蓋には、もちろん、細菌がつきますが、水分がなくなると彼らは活動できなくなるのです。だから、完全ではありませんが、数日間の実験の間は、ほぼ汚染されることがありません。この操作を通して、上から雑菌が降っていることを実感できます。家庭の場合は、料理に蓋をすることが肝要です。蓋をするだけで、雑菌からの汚染をかなり防ぐことができます。蓋を空けている間、どんどん菌が入り込んでいると思って下さい。実験では、フラスコに栓をしている培地の場合、栓を開ける際は、栓とフラスコの口を火であぶります。そのことにより、菌の進入を防ぎますが、一度栓を開けてしまうと、それくらいでは、完全に防ぐことはできません。それで、実験終了時にまだ培地が残っている場合は、再度、オートクレーブで、120℃20分の滅菌を行うことになります。

 最後は、実験台と実験者の手の消毒です。実験台は、ヒビテンという消毒薬を使っています。これは、いろいろとあるでしょう。実験者の手の消毒は、70%アルコールを使います。注射の場合も、70%アルコールです。99%アルコールの方が効果があるようですが、親水性に欠けるので、表面しか消毒できないのです。逆に50%アルコールになると、親水性はありますが、消毒効果が弱いので、70%アルコールが消毒効果が一番高いことになるのです。これまで、述べたように、腕時計、指輪ははずしておくことは言うまでもありません。前回書き忘れましたが、病原性ブドウ球菌は、鼻腔に多く住んでいますので、間違っても実験中は鼻を触ってはいけません。また、消毒をして、操作を続けることになります。家庭でも、70%アルコールを常備することは可能でしょうが、透明なだけに、子供の事故の可能性もあるので、あまりお勧めできません。石鹸で充分手を洗うことを行って下さい。

 



 
※「身近な食品衛生150訓」西田博著/中央法規出版1980年

※「生物学辞典」八杉龍一他/岩波書店1996年

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