コムパルソリイ・サイエンスNo.17




「きれいな手で食事をするには」  
 食事の前に手を洗うのは、常識ですが、きれいな手で食事をするのは、そう簡単なことではないようです。まず、一番の汚染源は、皆さんが想像する通り、大便をした後です。拭く際に、トイレットペーパーを通して、大腸菌が手につくのです。糞便の性状により大腸菌が着く度合いがことなるようです。普通便ですと、2枚重ねても大腸菌が浸透してきますし、下痢などの水様便ですと、4枚重ねても浸透してくるのです。こうなると、ウォシュレットがお勧めでしょうか。でも、公衆トイレでは、なかなかありませんし、困ったものです。

 次に、その手をどう洗浄するかが問題となります。まず、よくやる流水でジャーと手を洗う方法。これだと、洗浄前の80〜120%の菌が残るそうです。なぜ、120%、つまり洗う前より菌が増えることがあるかと言うと、手の爪、しわに入っていた菌や、菌の塊が潰れたりして増えることがあるのです。ですから、流水で一回さっと流すのは、気持ちはいいかもしれませんが、かえって危険なのです。手洗い後の菌の残存率を見ると、冷水より、温水、温水より、石鹸使用、さらに3%クレゾール石鹸と残存率が減少していきます。手洗いのプロはお医者さんです。手術前は、30分以上かけて手を洗うとのことです。通常の生活では考えられませんが、一応、理想的な手洗いの方法を下に紹介します。    

@ 手洗い前に爪を短くする。
A 水道水で手を濡らし、石鹸を手にじゅうぶんつける。
B 手の平を合わせてよくこする。
C 左右の5本の指を互いに組み合わせてこする。
D 一方の手の上に片方の手を重ね、指を同じく組み合わせてこする。
E 次に親指と人差し指の内側をそれぞれ反対の手で充分こする。
F 小指の外側を反対の手の平でこする。
G 手首を反対の手でつかみ、手首を回しながら洗う。
H 指先は爪ブラシを使って、爪先と爪の縁を念入りに洗う。
I 次にこぶし洗い。片手をこぶしに握り、一方の手でこれを包むようにして指の関節部分をよく洗う。
J 手の甲を片方の手の平でよく洗う。
K 最後流水でよく洗い落としてから、さらに50倍に薄めた逆性石鹸液で30秒、手首まで浸す。

 どうです。料理の前には、これくらい徹底したいものですが、料理の前に疲れてしまうでしょうか。

 男性と女性の手はどちらがきれいだと思いますか。
 これは、男性なのです。女性は家事をするので、手が汚れる場面が多いのです。それに、長い爪と指輪、これが汚れる原因なのです。  短い爪の場合(例0.01g)、そこにいる細菌数は、10の3乗(千)個程度です。それが長い爪の場合(例0.1g)、細菌数は、10の6乗(百万)個程度となります。男性にとってネイルアートをして、綺麗な指輪をはめた女性の手は魅力的ですが、菌にとっても魅力的なようです。  



 
※「身近な食品衛生150訓」西田博著/中央法規出版1980年

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