コムパルソリイ・サイエンスNo.16




「ちょっと待った、そのおしぼり大丈夫」  
 暑い時に、喫茶店に入って、おしぼりで手を拭くと、さっぱりしますね。おまけに、顔を拭いたりすると、より一層、落ち着きます。でも、おしぼりって大丈夫なのでしょうか。

 おしぼりには、衛生指導基準があります。
○ おしぼり1枚あたりの生菌数が1万を超えないこと。
○ 大腸菌群が検出されないこと。
○ 病原性ブドウ球菌が検出されないこと。
○ pHが5.2〜8.2であること。
○ 変色、異物がないこと。

 しかし、抜き取り調査をすると、おしぼり1gあたりの生菌数1000万から1億、大腸菌群100万、黄色ブドウ球菌1万、カビ100万程度汚染しているぞうきんのようなおしぼりに出会うとのことです。もともと片手の汚染菌量は、1000だと言われていますので、手より汚いもので拭くことはないでしょう。もちろん、これは、布製の何度も洗って使うおしぼりのことです。原因は、お客さんの使い方と業者の洗浄の仕方にあるようです。
 僕は、レストランでバイトをしたことがありますが、そこでは、本当に雑巾代わりにおしぼりを使っていました。お客さんの使用済みのおしぼりで、テーブルや椅子まで拭いていたのです。さすがに、業者からクレームがついて、椅子まで拭くことはしなくなりましたが。

 そのようなおしぼりをきれいにするには、どれだけの労力が必要でしょう。良心的な業者では、4回くらい洗浄するようですが、それでも、充分ではありません。決め手は、圧力釜による120℃20分の滅菌ですが、そんなことをすれば、すぐに布が傷んでしまいます。 ということで、喫茶店などのおしぼりはそれほど信用がおけないということは確かなようです。

 ところで、菌は、どのくらいの勢いで増えるのでしょうか。かりに1時間に1回分裂して増えると仮定して(Doubling time 60minutes)計算してみましょう。

0-1
1-2
2-4
3-8
4-16
5-32
6-64
7-128
8-256
9-512
10-1024
11-2048
12-4096
13-8192
14-16384
15-32768
16-65536
17-131072
18-262144
19-524288
20-1048576
21-2097152
22-4194304
23-8388608
24-16777216
25-33554432
26-67108864
27-134217728
28-268435456
29-536870912
30-1073741824
31-2147483648
32-4294967592
33-8589934592
34-17179869184
35-34359738368
36-68719476736
37-137438953472
38-274877906944
39-549755813888
40-1099511627776
41-2199023255552
42-7398046511104
43-8796093022208
44-17592186044426
45-35184372088832
46-70368744177664
47-140737488355328
48-281474976710656

 どうです。凄い数でしょう。はじめは、1個だった細菌は、1時間に1回分裂を続けると2日後には、281兆4749億7671万656個になるのです。これは、栄養が充分な場合です。限られた培地では、栄養がなくなると分裂できなくなりますし、自分達の老廃物で環境も悪くなりますので、一定の数で限界となります。しかし、今回の雪印の事件のように、開放系で次々と新しい栄養物がくれば、このようにどんどん増えていくのです。  

 


 
※「身近な食品衛生150訓」西田博著/中央法規出版1980年

※"Antibiotic-Resistant Bacteria:There is Hope",Susan Offner "American Biology Teacher,Volume60 No.6 1998

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