コムパルソリイ・サイエンスNo.14




「食中毒のシーズン到来?」  
 昨年、一年間で食中毒は、約2000件報告されていて、約2万人の人が苦しめられたそうです。朝日新聞記事データベースで調べてみても、約1000件がヒットしました。

 日本の食中毒の約2割が家庭で発生しているようです。食べ物では、生野菜に注意する必要があるそうです。生野菜についていた土や肉汁が原因である場合があるそうです。まな板やふきんなどを殺菌することは、どなたも気をつけていることと思いますが、スポンジの殺菌が充分でないことが多いそうです。スポンジ1g(消しゴムの大きさぐらい)に最近が約3億個含まれていたという報告もあります。細菌は、指数関数的に増えますので、ちょっとでもついていれば、またたく間に増えていきます。スポンジの消毒は、まず乾燥させることが大事です。台所の上に置かずに、吊るしておけば、乾燥させることができます。

 日本では、水が問題となることは、あまりありませんが、世界的に見れば、まだまだ水が問題となっている地域がたくさんあるようです。例えば、ある地域の住民の便は全て、下痢状のものだそうですが、住民は、それを下痢だと思っていないそうなのです。つまり、年中誰もが下痢をしているからです。その原因は、ほとんどが、飲料水の汚染です。同じ水源で、洗濯をし、排便をし、食器を洗い、飲料水として利用する、世界を見渡すと、このようなことは、まだ多くの地域で行われています。そのような地域では、ウイルスや細菌、動物寄生虫などの感染源が飲料水に存在し、住民の健康を脅かしています。しかし、経済上、習慣上、それを改めることなく現在に至っているのです。

 日本でも、昔から生水は飲まないようにと言われていましたが、そのことは、忘れられつつあるかもしれません。日本における食中毒の報告の中にも中学生の団体が牧場の水を飲んで食中毒を起こした例が見られます。沢の水などによく見られるケンミジンコがサナダムシの媒介となった例もあります。ケンミジンコは、寄生虫の一種であるジョウチュウの幼虫を媒介とする場合もあります。山の清水は、冷たくておいしいのですが、このような危険性があることも認識しておかなくてはなりません。

 当然、刺身にも危険性があります。イカ刺、しめサバなどです。どちらも、僕は大好きですが、そこにアニサキスという寄生虫がいる場合があることが知られています。これを有名にしたのは、俳優の森繁久彌さんです。彼は、名古屋で公演中、激しい腹痛を訴え、2時間にも及ぶ手術を受けました。診断は、「腸アニサキス症による腸閉塞」で小腸を約30cm切ったそうです。この原因は、お刺身にあったようです。

 日本でも、食中毒の原因は、まだどこにでもありそうです。



 

 


 
※「笑う回虫」藤田紘一郎/講談社1994

※「王様気取りのハエ」ロバート・テソウィッツ/紀伊国屋書店1990




トップページへ戻る