コムパルソリイ・サイエンスNo.9




「え!こんな色だったの?」  
 新しい服を買って外に出たら、「え、こんな色だったの。」という経験はありませんか。
 これは、ランプの色によるものです。私達が色を感じるのは、光源からの反射を見ているのです。だから、光源の色が異なれば、見える色も違うのです。いつも同じランプを使っていれば、何も問題はないのですが、場所によっていろんなランプが使われているので、気をつけないと、気に入って買った洋服の色が違っていたということがあり得るのです。



続き  

 一番極端な例は、トンネルの中で使われているナトリウムランプです。これは、ほとんど黄色の波長しか放射していないので、このナトリウムランプのもとで、物を見ると、黄色の濃淡でしか見えません。逆に太陽光のもとで物を見ると、鮮やかに見えます。これは、太陽光が紫、青、緑、黄、橙、赤の波長を含むからです。


 光源が太陽光の放射と同じような放射を行えば、太陽光のもとと同じように見えます。白熱電球、蛍光ランプは、太陽と同じような波長を含んでいます。だから、おおまかには同じなのですが、波長のエネルギーの度合が少し異なっています。波長のエネルギーの度合が異なると色が異なって見えます。


 太陽光は、紫(波長380nm)から赤(780nm)までの光をほぼ万遍なくなだらかに放射しており、そのピークが緑付近(500nm)にあります。一方、白熱電球は、400nmから780nm(最大2000nmまで)を放射していますが、そのピークは1200nm付近にあります。つまりわれわれ人間が見える範囲では、780nmがピークになっているのです。


 標準的な蛍光ランプの場合は、380nmから720nmまで放射しており、そのピークは青(450nm)、緑(550nm)、赤(630nm)の3つあります。色の3原色に焦点を当てており、それ以外の波長は少なめに放射しているのです。なんだか、音の媒体に例えると、アナログ形式の太陽(レコード)、デジタル形式の蛍光ランプ(CD)のようにも思えます。


 蛍光ランプには、たくさんの種類があります。用途によって使い分けているのです。例えば、植物生育用の蛍光ランプは、380nmから780nmまで放射していますが、そのピークは、450nmと650nmの二つです。これは、光合成色素がその波長を吸収して利用しているからです。550nm付近はあまり使われないので、放射を少なくしているのです。


 また、ブラックライトは、300nmから450nmまでを放射しており、350nmにピークがあります。これは、紫外線を見ることができる昆虫を誘う目的があるからです。昆虫の視力は紫外部に偏っているのです。ただ紫外線だけだと人間の目に見えないので、ランプがついているかどうか分かりません。そこで、紫側の波長も少し放射して見えるようにしているのでしょう。ちなみに、生まれてすぐの子は、大人が見えない紫外線が見えると言われます。彼らが見ている世界は、われわれとどんな風に違うのでしょうね。

 

 


 
※「電磁波」二間瀬敏史・麻生修著/ナツメ社1999




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