コムパルソリイ・サイエンスNo.7




「日光消毒こそ最高!」  
 最近、清潔すぎるということも聞きますが、O157のような事故があると、誰しも関心を持たざるを得ません。実際、細菌による食中毒の記事を見かけると、心配になってきます。家庭での食中毒は記事になりませんが、統計をみると、かなり多いことが分かります。細菌という目に見えない敵を相手にするだけに、その対策を充分練っておくことが必要です。




続き  

 消毒というと、まず、洗剤、そして、熱湯を思い浮かべますが、実は、日光消毒が極めて有効であることが実験により確かめられています。この実験では、細菌として、大腸菌、腸炎ビブリオ菌を対象として行われました。これらの菌液にサラシ布と木製のまた板を浸し、洗剤液処理、消毒液処理、アルコール処理、熱湯処理、日光処理が行われました。その結果、洗剤による消毒では、腸炎ビブリオ菌の生存は減少するものの、大腸菌の生存は多く、日光消毒による生存率は10-3以下でした。消毒液処理、アルコール処理、熱湯処理では菌は検出されませんでした。

 この結果を見ると、洗剤による消毒がいかに危ういかが分かります。しかも、洗剤の場合、残留したものが口に入る危険性があります。消毒液、アルコールは有効ですが、家庭で使用することがためらわれます。また、熱湯は、食器などに用いるのはいいのですが、布巾やまな板に用いるとクックドフレーバーという肉汁や魚汁の悪臭を発生する恐れがあります。ですから、家庭での消毒には、日光消毒が適していることが分かります。この実験では、太陽光に1時間曝しただけでした。

 また、布団干しの効果を調べた実験もあります。その結果は、太陽光に曝すと2時間で殺菌効果が現われますが、それは表面だけです。ですから、2時間片面を干したら、裏返してもう2時間干すことが大切です。時間帯は10時から14時が有効です。2時間以上干すと、今度は、表面素材の劣化が心配になってきます。だから、この方法がよいのです。

 太陽光に含まれる紫外線が細菌のDNAにダメージを及ぼし、乾燥によっても細菌を死に追いやります。病院や研究室などの施設では殺菌灯(紫外線ランプ)を用いた殺菌が日常的に行われています。最近では、理容室でも殺菌に殺菌灯を使うところが増えているそうです。もちろん、これは、太陽光に含まれる紫外線とは異なり波長の短い紫外線です。波長254nmにピークを持っており、DNAの吸収波長に近いため大きな障害を及ぼすのです。太陽に含まれる紫外線は、波長が300nm以上なので、殺菌灯ほどの威力はありませんが、この実験に示されるように充分効果があるのです。是非、まな板の日光消毒、布団干しを行って下さい。

 


 
※森ウメ子・中野立央・原田和樹・大西武雄:「大腸菌・腸炎ビブリオ菌を指標とした台所での保健衛生から見た各種消毒法」、防菌防黴、24(2)、pp115−118、1996

※上村元子:「布団に付着した微生物の生成に及ぼす日光照射の影響」、防菌防黴、22(4)、 pp205−211、1996 防菌防黴誌




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