コムパルソリイ・サイエンスNo.6




「寝る子は育つ」  
 身長に関しては多くの人が興味を持っていると思います。青少年向けの雑誌には、背が伸びる方法に関して幾つもの商品が紹介されています。 しかし、身長は、基本的には、遺伝が主な要因です。私の父がお見合いで母を選んだ条件は、背が高いことでした。父は、平均より小柄な人だったので、子供は高い子を望んだのでしょう。父の見通しはある程度あたり、私は、私の世代の身長の平均ぐらいであり、私の姉は、姉の世代の身長の平均よりやや低いといったところです。




続き  

 身長は、複数の遺伝子により決定される量的遺伝だとされています。要因がたくさんあり、それらが解明されていないのです。この場合、統計学が有効となります。統計から見ると、子供の身長は、ほぼ両親の身長により決まってきます。もし、170cmの父親と160cmの母親が結婚すると、息子の場合、(170+160+12)/2=171cm、娘の場合、(170+160-12)/2=159cmと予想されます。この予想は、60%程度の確率であたるとも言われます。もちろん、これを中心とした誤差もあります。

 私の家族の場合、まだ子供が成人していないので、最終データではありませんが、私が170cm、妻が170cmで、高1の娘が160cm、中1の娘が173cmです。この計算値から予想される身長は、164cmですから、誤差の範囲なのでしょうか。

 背が伸びるためには、成長ホルモンとチロキシンの両方が必要です。この成長ホルモンは、激しい運動やストレスによって分泌されるほか、深い眠りのときにも分泌されます。睡眠には、レム(Rapid Eye Movement 眼球の運動が激しいことをさし、体は休息していても脳は活動している)睡眠とノンレム睡眠(体も脳も休息している)の二つの種類があり、ノンレム睡眠が深い眠りとして知られていますが、このノンレム睡眠で寝入りばなの最も深いときに分泌されるとのことです。

 成長ホルモンは、骨の発達や細胞分裂を促進する働きがあり、成長に欠かせません。また、成人でも疲労回復に役立っており、体に蓄積している脂質を溶かし出しエネルギー源にする働きもあると言われています。これは、肌の新陳代謝を促すことになるので、よく眠ると肌もきれいになるのです。だから、寝る子はよく育つと言われるのはあたっていたのです。

  私は、受験勉強が身長を伸ばす妨げになっているのではないかと心配しています。中学、高校と体をつくるのに大切な時期に十分な睡眠をとらずに勉強したのでは、伸びるはずの背も伸びないのではないかと思うのです。欧米の子供達は、体ができあがった大学になってから勉強を本格的にするので、成長を妨げないのでしょう。

 もちろん、成長は食事の量が関係してきます。ですから、一般に経済的に恵まれた家庭に育った子供は、平均より身長も高く、体重も重い傾向があります。

 


 
※「脳 小宇宙への旅」信濃毎日新聞社編/紀伊国屋書店1991
※「人のための遺伝学」安田徳一著/裳華房1994
※「ヒトの生物科学」ニコラス・カーター著・小野寺一清ら訳/学会出版センター1986




トップページへ戻る