O−157


知の食卓5号 1996.8.1
      



   現在、新聞やテレビは病原性大腸菌O−157の話題で持ちきりです。そこで、皆さんもよくご存知だとは思いますが、少し違った面から補足をしたいと思います。

 そもそも大腸菌とは何かということですが、生物学辞典を見ると、「腸内細菌の一種で哺乳類の腸管を寄生場所としている。通性嫌気性菌・グラム陰性菌。動物の糞便に汚染された外界に広く存在し、飲料水や食品が糞便で汚染されていないかどうかを検査する時の指標となる。大腸菌は健康人の腸管に常在しているので、病原性はないと考えられていたが、下痢の原因菌となる大腸菌が3種類存在することが明らかになり、その一つが乳幼児の下痢症の原因となる一群の菌で、特定のO抗原を有し、病原性大腸菌と呼ばれる。」と書いてあります。

 ですから、従来はそれほど危険性がないと考えられていたようです。私の感覚でも、大腸菌は遺伝子工学で盛んに使われているので、安全な菌であるというイメ−ジを持っていました。大学の実験でも、大腸菌を増殖させて増殖曲線を描く、大腸菌にファ−ジを感染させて、死滅の割合を調べる、プラスミドを用いて大腸菌の形質転換を行う、といった実験を行っていて、ファ−ジの扱いには、慎重になっていますが、大腸菌にはそれほど気を配っていませんでした。だから、今回のような騒ぎになった時にとても意外な気がしたのです。

  ところで、このO−157のOは、H抗原がない(ohne 独)ということに由来しています。このO−157はベロ毒素を出すと言われていますが、これは、アフリカミドリザルの腎臓由来細胞であるベロ細胞に対して毒性を示すことから名付けられた者です。そして、有名なHela細胞(ヒト由来)にも毒性があります。

 O−157に対する予防策もいろいろなところで述べられていますが、特に、トイレットペ−パ−に気をつけなければならないと思います。トイレットペ−パ−を10枚くらい重ねても大腸菌は浸み出すとも言われています。ジェット式のトイレのように、一度水で流してから拭く場合はまだ安全でしょうが、そうでない場合は、相当気をつけないといけません。トイレのあとは、充分すぎるくらい手を洗っておくべきです。また、大腸菌は、対数的に増加することもよく知られています。ですから、はじめの菌数が少なくても条件が良ければ、10倍、100倍1000倍と増えていくのです。これもとても怖いところです。更に、嫌気性なので、空気がないところを好むわけです。密閉した容器でも少しでも付着していれば安全ではないわけです。気をつけましょう。







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