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以下の文書は次の一部分の翻訳です。 使用している絵も英語版の Wikipedia の絵から作ったものです。

Pendulum clock - Wikipedia (振り子時計)

振り子は通常の意味では「重力振り子」のことですが、 ここでは「ねじれ振子」も登場します。 「ねじれ振子」は 1793 年に Robert Leslie により発明され、まもなく「ねじれ振子時計」 も製作されます。「重力振り子時計」は熱補正をする方法が色々あり、 当初から正確でしたが、「ねじれ振子時計」の方は熱補正する方法が 1951 年に至るまでなく、 計時装置としては正確ではありませんでした。 しかし、よく売れたようです。「ねじれ振子時計」は日本ではほとんど販売されなかったのではないかと 思いますが (贅沢品)、現在時計店で見る置き時計のかなりの部分が、この「ねじれ振子時計」の真似をした 動作をしています。

発明された当初の振り子時計は振幅が大きい振り子で、1 日に 15 秒の誤差があったそうですが、 これも天体観測に使用されたようです。だからこれには秒針が付いていて、 秒単位で時刻合わせをする機能が付いていたと思われます。 天体観測用の機械式時計にはこれ以前にダブル・ビート・エスケープメントを使用する時計が ありましたが、こちらの方は 1 日に 30 秒の誤差があり、振り子時計の移行により、確かに精度が向上しています。 以上に関しては、訳注の「振り子時計の忘れ去られた開拓者」をご覧ください。

振り子時計 (Pendulum clock)

振り子時計は計時要素として、振り子、すなわち揺れる重りを使用する時計である。 計時のために振り子を使用する利点は、これが共鳴装置だからである。 つまり、振り子はその長さに依存して正確な時間間隔で振動するが、 それ以外の時間間隔では振動しないのである。 1656 年のクリスティアーン・ホイヘンスの発明から 1930 年代に至るまで、 振り子時計は世界で最も正確な計時装置であり、これにより広範囲で使用されることになった。 振り子時計が動作するためには、移動してはならない。 どのような動きも、あるいは加速度も振り子の動きに影響を与え、不正確となる。 従って、持ち運び可能な計時装置には他の仕組みを使用する必要がある。 振り子時計は今日では、装飾的で、アンチークの価値の理由から所有されている。


1637 年にガリレオ・ガリレーにより考えられた振り子時計
最も初期の振り子時計のデザイン、 完成には至らなかった。

ウィーン標準時計
壁掛け振り子時計
  1. 歴史
  2. 仕組み
  3. 重力振り子時計 (Gravity-swing pendulum)
  4. ねじれ振り子時計 (Torsion pendulum)
  5. エスケープメント (Escapement)
  6. 時刻表示 (Time Indication)
  7. スタイル (Style)
  8. 訳注:振り子時計の忘れ去られた開拓者
歴史

振り子時計はドイツの科学者である クリスティアーン・ホイヘンスにより 1656 年に 発明され、翌年に特許が取られた。 ホイヘンスは彼がデザインした時計を製造するために時計職人のサロモン・コスター (Salomon Coster) と契約を結び、コスターが実際の時計を製造したのである。 ホイヘンスは 1602 年に始まるガリレオ・ガリレーの振り子の研究に触発された。 ガリレオは振り子が計時機能に有益となる性質、すなわち等時性を発見した。 これは振り子の振動の周期が近似的には振幅の大きさに依存しないということである。 ガリレオは 1637 年に振り子時計のアイデアを持っており、 彼の子息は 1649 年に部分的に構築したが、どちらも完成には至らなかった。 振り子は計時機能に使用された最初の調和振動子であり、 これの導入は 時計の精度を飛躍的に増大し、1 日 15 分であったものが 15 秒となり、 これにより、当時の「バージとフォリオットによる時計」が作り直され、 振り子で置き換えられるにつれ、急速に広まることになった。

 
1656 年にクリスティアーン・ホイヘンス
により発明された最初の振り子時計



振り子を使用するように改修されたランタン時計
バージ・エスケープメントによる幅広の振り子を
収納するために「翼」が両側に付けられた。

これらの初期の時計は バージ・エスケープメントにより、振り子の振幅が大きく、 100° にもなった。1673 年の振り子の分析をした本「振り子時計」(Horologium Oscillatorium) の中で、ホイヘンスが示したことは、大きな振幅は振り子を不正確にし、その結果、 装置で提供される駆動力により 周期と時計の速度に避けざるを得ない変動が生じることであった。

時計製造業者は振幅角度が数度である振り子のみが等時性を持つことに気がつき、 これにより 1670 年頃、アンカー・エスケープメントが発明された。 アンカー・エスケープメントは振り子の振幅を 4°-6° に制限した。 このアンカーは振り子時計の標準的なエスケープメントとなった。 増大した精度に加え、 アンカーの狭い振幅により、時計の箱は、より長く、より遅い振り子を収納することになり、 これにより、必要とされる動力は小さくなり、動力機構の摩耗が減少した。 秒振り子 (これはロイヤル振り子とも称する) では 1 回の振動が 1 秒で、 およそ 1 メートル (39.37 インチ) の長さがあり、 広く使用されることになった。 この時代の長くて狭い時計は、最初はウィリアム・クレメント (William Clement) によって製造され、 「お祖父さんの時計」 (grandfather clock) として知られることになった。 このような進展の結果、時計の精度が増大し、 それ以前はまれであった分針が 1690 年頃に時計の盤面に付け加えられることになった。

振り子時計の発明以後、18 世紀と 19 世紀の時計の革新の波は振り子時計に多くの改良をもたらした。 直進式 (deadbeat) エスケープメントは 1675 年にリチャード・タウンリー (Richard Towneley) が発明し、 1715 年には ジョージ・グラハム (George Graham) が彼の精密標準時計 (precision regulator clock) に使用したことから 一般に広まり、今や大半の現代の振り子時計に使用されている。 振り子時計が夏に遅くなることから、 温度の変化により、振り子の棒が伸びたり縮んだりすることがエラーの原因であることがわかった。 これは温度補正した振り子の発明で解決され、 1721 年には ジョージ・グラハムによる水銀振り子、 1726 年には ジョン・ハリソン (John Harrison) による 「 すのこ型振り子」(あるいは「格子式振り子」, grid-iron pendulum) が発明された。 これらの改良により 18 世紀中頃には精密振り子時計は 1 週間で数秒の精度を実現した。

19 世紀に至るまで、時計は個人の職人による手作りであり、とても高価であった。 この時代の振り子時計の豊かな飾りはその価値が富裕な人の身分の象徴であることを示していた。 ヨーロッパのどの国の、どの場所の時計職人も、彼ら自身の特有な様式を発展させた。 19 世紀までに、 時計の部品が工場で生産されるようになると、次第に中流階級は振り子時計を手に入れることができるようになった。

産業革命の間、日々の生活は家庭の振り子時計によって編成されていた。 もっと正確な振り子時計は、標準時計 (regulator) と呼ばれ、 仕事場に設置され、仕事の管理や他の時計を合わせるのに使用された。 最も精密な物は天文標準時計 (astronomical regulator) と呼ばれ、 天体観測所で天体観測に使用されたり、測量に使用されたり、天測航法に使用された。 19 世紀の始めに海軍天文台の天文標準時計は国内における時刻配信サービスのための主要な標準の役目を果たした。 1909 年からは、国立標準局 (National Bureau of Standards) (現在の NIST) は米国の時刻の標準をリーフラー (Riefler) 振り子時計に基礎を置いた。 この時計は 1 日におよそ 10 ミリ秒の精度があった。 1929 年には、 ショート・シンクロノーム (Shortt-Synchronome) 自由振り子時計に移行し、1930 年には クォーツ時計に移行した。 ショート (Shortt) は 1 年に 1 秒ほどの精度があり、商用で生産された振り子時計では最も精度が高いものであった。

振り子時計は 1927 年にクォーツ時計が発明されるまでの 270 年間、正確な計時のための世界標準であり、 第二次世界大戦の間も標準として使用された。 フランスは 1954 年に至るまで、標準時計群の一つとして、振り子時計を使用した。 現在 (2007 年) に至るまでで、最も正確な実験的な振り子時計では 1990 年代に Edward T.Hall によって作られた Littlemore 時計であろう。

仕組み

機械式の振り子時計はすべて次の 5 つの部品を持っている。

訳注
「歯車の列」は gear train の訳です。train には列車の意味があるので、一列に並んだものと理解しかねませんが、 「歯車の列」は一つ歯車が動くと、次々に歯車が連動して動くという意味です。

もっと精巧な振り子時計は以下の複雑な物を含んでいることがある。

訳注
Striking train は定時に鐘を鳴らすための歯車の列、あるいは歯車仕掛け。 次が ソールズベリー大聖堂の Striking train です。 (Salisbury cathedral clock - Wikipedia) 右の方に人の下半身が見えており、大きさがわかります。

機械式のマスター時計として使用される電気機械式振り子時計は、 動力源が電気動力のソレノイド (solenoid, 筒型コイル) で置き換えられ、 これは磁気により振り子に衝撃を与える。 またエスケープメントも、スイッチあるいは光検出器で置き換えられ、 これにより振り子が衝撃を与える正しい場所にいることを検知する。 これらを、もっと最近のクォーツ振り子時計と混同してはならない。 クォーツ振り子時計は電子クォーツ時計のモジュールが振り子を揺らしているのであり、 本当の振り子時計ではない、何故ならば、計時はモジュール内のクォーツ・クリスタルによって 制御され、揺れている振り子は単に飾りのシミュレーションでしかないからである。

重力振り子時計 (Gravity-swing pendulum)

振り子の振幅する周期は (振り子の) 有効長の平方根に比例する。 振幅が小さければ、周期 -- 完全に一周する時間 (2 回の振幅) -- を秒で表せば、周期 T は

で与えられる。 但し L は振り子の長さの m (メートル) による表示, g は局所的な重力加速度の m/sec2 による表示である。

すべての振り子時計には速度を調節する手段がある。 通常は振り子の重りの下に付いている調節用のナットがある。 重りを上にあげれば、振り子の長さが短くなり、振り子の周期が短くなって、 時計の進み方が速くなる。

ある種の振り子時計では、微調整には補助調節が使用され、 小さな重りを振り子の棒に沿って上下させる。 ある種のマスター時計や塔時計では、調節は棒の上に搭載した小さな皿で実現しており、 ここに小さな重しを付け加えたり取り除いたりして (振り子の) 有効長を変化させ、 これにより (時計の) 速さを時計を止めずに調節できる。

振り子の周期は振幅が増えれば少し増大する。 振幅が増大すれば、エラーが増える。 数度以内の小さな振幅に限定すれば、振り子はほぼ等時性を保ち、 周期は振幅の幅に独立である。 従って、振り子時計の振り子の振幅は 2° から 4° に限定される。

温度補正

振り子時計の狂いの一つの原因は振り子の棒が温度の変化により、 長さを変えることにある。 温度が上がれば、棒が膨張し、振り子が長くなり、 その結果、周期が長くなって、時刻が遅れることになる。 木材は金属よりも膨張しない。 そのため、より古い上質の時計では振り子の棒は木製であった。 この膨張を補正するために初期の高精度時計では水銀振り子を使用した。 水銀振り子は 1721 年に ジョージ・グラハムにより発明された。 水銀振り子では重りは液体の水銀の容器である。 温度が上がれば棒が膨張するが、容器の中の水銀も膨張し、 容器の中でわずかに上昇し、その結果、振り子の重心を同じ高さに保つ。

もっとも広く利用された温度補正振り子は 1726 年に ジョン・ハリソンにより発明された すのこ型振り子 (あるいは「格子型振り子」) である。これは亜鉛や真鍮などの熱膨張率の高い金属と、鉄のような熱膨張率の 低い金属を平行にして、枠の中に入れて「すの子」(あるいは「格子」) のように するものである。 構成法から、膨張率の高い棒が膨張率の低い棒の長さ変化によって補正される。 この形式の振り子は上質の時計と結びつけられたため、 偽のかざりの「すのこ」(あるいは「格子」) が往々にして振り子時計に見られるが、 実際には温度補正の機能がない。

1900 年頃に製造された科学用の高精度振り子時計には低膨張率の材質による 「ハイ・テク」振り子が使用された。 このような材質にはインバーや 溶融シリカ 【訳注:ガラスのこと】がある。

訳注
インバー合金に関しては ニッケル を参照のこと。
空気抵抗

振り子が揺れる大気には粘度があり、これは気圧、湿度、温度により変化する。 この抵抗からも動力が必要とされ、動力はそれ以外に巻き戻しの時間を拡大するのに使用される。 振り子は精度を上げるために、空気抵抗 -- これが動力を最も必要とする所 -- を減らすために 磨かれたり流線型にすることがある。 19 世紀や 20 世紀始めの天文台の時計の振り子は格納容器内で動作させ、 空気抵抗を減らすために気圧を下げて、 振り子の振動がより高精度となるようにした。

水平調整とチクタク音 (Leveling and 'beat')

時を正確に刻むためには、振り子時計は絶対に水平でないといけない。 そうでないと、振り子は一方に傾き、エスケープメントの対称動作を崩してしまう。 この状態は、時計のチクタク音から聞き取ることができる。 チクタク音は正確に同じ間隔で 「チク...タク...チク...タク」のように聞こえないといけない。 もしそうでなく、音が「チク.タク...チク.タク」のように聞こえれば、 時計はチクタク異常 (out of beat) になっており、水平にしないといけない。 この問題により時計は簡単に停止し、これが修理依頼の最も普通の理由である。 水準器や時刻音測定器 (watch timing machine) があればチクタク音に依存する方法よりは 高精度に判断できる。 古い据え置き式の時計にはしばしば、脚に水平にするための調整用のネジがあった、 より新しいものでは機械装置の中に水平調節装置が付いていた。 現代的な振り子時計では、チクタク音の自動調節装置が付いていて、この調整はする必要がない。

訳注
Watch timing machine - Wikipedia に よると、watch timing machine とは音響的に時計のチクタク音を調べる機械です。 時計歩度測定器 - Wikipedia と同じものかどうか不明ですが、相互にリンクが張っていないので多分別物です。 訳語が思いつかなかったので、 時刻音測定器としました。
局所重力 (Local gravity)

振り子は重力の増加により速くなり、局所重力は緯度や高度によって変化するため、 振り子時計を移動したあとは調整しなおす必要がある。 例えば、振り子時計を海抜 4000 フィートの地点に移動すれば、1 日当たり 16 秒遅れることになる。 時計を高い建物の頂上に移動すれば、重力が低くなるため、測定可能となるくらいに遅くなる。

ねじれ振り子時計 (Torsion pendulum)

「ねじれ振り子」は「ねじれバネ振り子」とも呼ばれ、 輪のような塊 (大半は交差するスポークに 4 つの球がついている) で、 これがバネ鋼の垂直片 (リボン) から吊り下げられており、ねじれ振り子時計の統制装置となっている。 塊が (横方向に) 回転して、サスペンション・スプリングを巻き上げたり、巻き戻したりする。 インパルスがスプリングの上部に加えられる。 重力振り子より周期がとても遅く、30 日あるいは 1 年もネジを巻く必要がない。 1 年間、ネジを巻く必要がない時計は 「400 日時計」、「永久時計」あるいは「記念日時計」 とも呼ばれた。「記念日時計」と呼ばれたのは時々結婚記念日の贈り物とされたからである。 ドイツの会社である Schatz と Kundo はこの形式の時計の主な製造業者であった。 この型式の時計は局所重力の影響を受けないが、 補正していない振り子時計よりは温度に影響される。

訳注
次が「ねじれ振子時計」の写真です (Torsion pendulum clock - Wikipedia)。
外見がこれと似ている置き時計を最近よく見かけます。 但し、これは外見だけで(電池が 2 組必要)、恐らく「ねじれ振り子時計」の外見を真似したものだと思います。
エスケープメント (Escapement)

エスケープメントは、通常は歯車装置から振り子を駆動し、 時刻を刻む部分である。 大半のエスケープメントには固定状態と駆動状態があり、 固定状態では何も動かない。 振り子の動きがエスケープメントを駆動状態に切り替え、 エスケープメントは次に振り子の周期のある部分で振り子を押す。 注目すべき、しかし珍しい例外が ハリソン のグラスホッパー・エスケープメント である。 精密時計においては、 エスケープメントは小さな重りやバネによってしばしば直接駆動され、 一方小さな重りやバネは ルモントワールと呼ばれる 独立の仕組みによって頻繁にリセットされる。 これにより、エスケープメントが歯車装置の変動の影響から解放される。 19 世紀後期においては、 電気機械式のエスケープメントが発展した。 これにおいては、 機械的スイッチや電子光電管が 振り子の揺れのごく短い期間に電磁石に通電する。 これらは、知られている非常に精密な時計の幾つかで使用された。 通常は天文時計で真空振り子と共に使用された。 振り子を駆動する電気のパルスは歯車装置を動かすピストンも駆動した。

訳注
グラスホッパー (grasshopper) とはバッタ、イナゴの総称です。 下の絵がグラスホッパー・エスケープメントです。絵をクリックすると Wikipedia の動画のページに移動します。

20 世紀に、W.H.ショート (W.H. Shortt) は 自由振り子時計/ショート・シンクロノーム 時計を発明した。 この時計の精度は 1 日に 1 秒の 100 分の 1 であった。 この時計においては、計時振り子は何もせずに、 重しを付けたアーム (重力アーム) に押されて動き続けている。 重しを付けたアームは必要となる直前に、別の (従属する) 時計によって、振り子に下ろされる。 次に重力アームは自由振り子に押しつけられ、完全に自由振り子によって決定された時間に開放されるのである。 一旦、重力アームが開放されると、重力アームは装置を開放し、従属時計により、解放されることに備えて自分自身をリセットする。 全体の周期は従属時計の振り子の上の小さなブレード・スプリングによって同期が取られている。 従属時計は、少し遅く動くように設定され、重力アームのリセット・サーキットは旋回アームを起動し、 ブレード・スプリングの先に接触する。 もしも従属時計が余り遅れるようなことがあれば、ブレード・スプリングはアームを押し、これにより振り子が加速される。 これによる時間の進み方はブレード・スプリングは次回の周期には従事せず、その次に従事する。 この形式の時計は 1920 年代の中ごろから天文台の使用の標準となったが、 クォーツ時計がこれに取って代わった。



ショート・シンクロノーム時計
( Shortt-Synchronome clock - Wikipedia の写真)
訳注
シンクロノームは企業名です。
時刻表示 (Time Indication)

時刻表示は、ほとんど常に伝統的な盤面で、ここに時針と分針が付いている。 多くの時計では、第三の小さな針が補助盤面の上で秒を表示する。 振り子時計は、通常はガラスのカバーを開けて分針を盤面の上でまわして正しい時刻に合わせるように デザインされている。 分針は滑りやすいフリクション・スリーブの上に搭載され、 これによりスリーブの上で回転することができる。 時針は歯車の列で駆動されているのではなく、 分針の軸に接続された小さな一連の歯車によって駆動されている。 従って、分針を回転すれば時針も自動的に回転する。

訳注
スリーブとは服の袖のことですが、機械の場合にはこれと類似なものを指します。 袖を (ボタン等で) 閉めてしまうと、腕と一緒に動きますが、力をかければ袖だけが動きます。 フリクションは摩擦の意味で、フリクション・スリーブは通常は中の心棒と一緒に動きますが、 力を加えると、中の心棒とは独立に動くように作られています。
スタイル (Style)

振り子時計は単に実用的な計時装置以上のものであった。 振り子時計は所有者の富と文化を表示するための高い身分の象徴であった。 振り子時計は意図された用途はもとよりのこと、 異なる国と時代に固有な伝統的スタイルで発展をした。 箱のスタイルはその時代に人気のあった家具のスタイルを幾分か反映している。 専門家は、アンティーク時計の箱と文字盤の微妙な違いから、数十年以内の精度で、 製造された時期を決定することができる。 以下が、振り子時計の幾つかの形式である。

訳注
原文では名前のみを列挙し、リンクをたどると詳しい説明が登場するようになっている。 (こうなっていないものも若干あります) そこまで翻訳できないので、簡単な説明を加えてあります。 最後に関しては、説明がなかったので、Yahoo の画像サーチの結果を表示するようにしています。 これは多分複製品です。

バンジョー時計

棚時計

カルテル時計

コンテ時計

鳩時計

長箱時計

ランタン時計

マスター時計(左端)

オージー時計

学校標準時計

ショート・シンクロノーム時計

ねじれ振子時計

ウィーン標準時計
訳注:振り子時計の忘れ去られた開拓者

ここでは次のページからの抜粋をします。

Johann Hevelius, Forgotten Pioneer of the Pendulum Clock
(ヨハネス・ヘヴェリウス, 振り子時計の忘れ去られた開拓者)

書いてある内容はホイヘンスが振り子時計を発明した時に、 ヘヴェリウスも振り子時計を開発中であったということです。 ヘヴェリウスとホイヘンスが知り合いであったことが書かれています。

1656 年の 9 月 7 日に、 ヘヴェリウスは、すばらしい年下の仲間であるクリスティアーン・ホイヘンスに手紙を 書いている。その中でホイヘンスのことを「天文学の宝石」とか 「名誉ある友」と言っている。 彼はまた、土星の観測に関しての論文の 1 部をホイヘンスに贈呈している。 ホイヘンスはヘヴェリウスの重要な出版物をほとんど持っていた。 これには次のものがある、 “Selenographia” (1647), “Mercurius in sole vicus” (1662), “Prodromus cometicus” (1665), “Cometographia” (1668) そして “Machina Coelestis” (1673)。 更には最後の論文に関しての英国の発明家である ロバート・フックの注釈も持っていた。 ヘヴェリウスを訪れた人には、 フランスの天文学者であるイスマイル・ブリオ (Ismael Boulliau)、 英国の天文学者である エドモンド・ハレー, ホイヘンスの弟であるフィリップス (Philips) がいる。 ホイヘンスと同様にヘヴェリウスも国際的に著名であった。 その結果、1664 年には英国 王立学会のフェローとなり、 1666 年にはフランス 科学アカデミーのフェローとなった。

更には

ヨハネス・ヘヴェリウス, 天体機械 (Machinae Coelestis, Heavenly Machines), ダンツィヒ, 1673

から、次のように抜粋しています。

動作し、時を刻む振り子時計が遂に完成した。

最初は、時計職人に仕事を始めさせることが困難であった。 (彼は製造することが不可能であると確信していたからである。) しかしながら、私が大真面目であることを指摘し、 出費に言及すると、彼は仕事を開始し、 幸運にも成功であった。 その結果できたものは時計で、バランス (balance) もなく、 バネもなく、より合わせた紐あるいは鎖が付いているフュージー もなく、 あるものは振り子と 1 つの重りと幾つかの歯車であった。

著者はダンツィヒで製造された最初の振り子時計をポーランド王に贈呈した。

この特別な時計職人が私の家で生活し、仕事をしている最中に、 この形式の振り子時計を 2 つ製造した。 この 2 つの中で、大きい方には 2 つの歯車しかなく、 もう一方は 4 つの歯車が付いており、1 つの重りが付いていた。 私はこの 2 つの時計の小さい方を恐れながら有名なカジミェシェ、 即ちポーランド王【訳注: ヤン2世カジミェシュ・ヴァーザ のこと】に贈呈した。 国王はダンツィヒを訪問中で、名誉あることに私の家を訪問してくれた。 その後、直ちに非常によく似た時計を注文した。 但し振り子は少し違っていた。 私は、この時計を、この出来事を思い出すための記念品とした。

有名な時計のデザイナーであるホイヘンスは振り子時計の挿絵を出版した 最初の人である。

この頃、時計職人は 2 つの振り子時計を完成しかけていたが、 まだ完成していなかった。 (時計職人はより大きい天文時計【訳注:恒星時を表示する時計】の仕事に割く時間がほとんどなかったのである。) 丁度この頃、 非常に著名で非常に専門的なクリスティアーン・ホイヘンスは類似の時計を 1657 年に発明し、 1658 年には振り子時計の挿絵を出版した。 これは科学的な文献にはとても都合がよいことであり、 私は彼を祝福する。 というのは、この素晴らしい発明は 時計の持つあらゆる欠陥の改善方法のみならず、 エスケープメント、軸、ピン、歯車に忍び寄る不正確さの問題を解決するからである。

Johannes Hevelius によるとポーランド王 ヤン2世カジミェシュ・ヴァーザ が ヘヴェリウスの家を訪問するのは 1659 年のことです。 だから、ホイヘンスの本が出版された後です。 従ってホイヘンスの本がヘヴェリウスの時計の製造に影響を与えた可能性があります。

ヘヴェリウスの話で興味をそそられたのは、 ホイヘンスが振り子時計の発明をした頃に、ヘヴェリウスも振り子時計を製造しようと していたことのみではなく、ヘヴェリウスが振り子時計を最初から天体観測に使用することを 目的としていたことにあります。 振り子時計は温度の影響を受けて、進んだり遅れたりするので、 どのように処理していたのかかなり気になったからです。

ヘヴェリウスのページには、ヘヴェリウスが四分儀で観測している挿絵があり、 クリックすると拡大された絵が表示されるようになっています。 手間を省くために、以下に挿絵のリンクを張りました。キャプションは原文の翻訳です。

挿絵のリンク
(1673 年の Andreas Stech の下絵に基づく Isaak Saal の版画)
2 つの時計が後ろの壁にかかっており、右の方には振り子がついている。
時計の盤面には時針のみならず秒針もある。
Hague 時計に幾分類似した時計が窓の敷居の上にある。

この絵には 3 つ時計が見えます。ページの説明から、 一番右の時計だけが振り子時計です。 見ると振幅の大きな振り子時計ですから、 バージ・エスケープメントを使用した振り子時計と思われます。 従って、精度は 1 日に 15 秒です。 右から 2 番目のものは機械式時計ですが振り子時計ではなく、 重りが駆動力であることがすぐにわかります。 左下の窓枠に 3 番目の時計が見えますが、 恐らくこれはゼンマイ時計です。 ゼンマイ時計には ルモントワールが装備されているはずです。 (振り子時計以外の時計はクロス・ビート・エスケープメントを使用していると思われます。 ティコ・ブラーエの観測装置壁面四分儀 / ティコ・ブラーエの使用した時計はどのようなものか ? を参照のこと) だから 3 つの時計は互いに種類の違う時計です。 どの時計も文字盤が 1 個しかないことは見てとれますが、 それ以上は不鮮明です。 しかし、どれも天体観測用と思われるので、 時刻が秒まで読み取れるはずで、しかも秒を簡単に合わせるための装置が付いていると思われます。 そして、どの時計も恒星時を表示するための時計であることも 明白と思われます。

3 つの時計のうち振り子時計でないものは観測をする前に、 天の赤道上の星の位置によって (あるいは赤道上の適当な星が子午線を通過する時刻によって) 時刻合わせをするはずです。 長時間、時計が正確な時刻を刻むことは少し難しいと思えるので、 このようにするはずです。 そう考えると振り子時計も同様に時刻合わせをしたはずだという結論になりました。 確かに振り子時計は温度によって狂い、 時間が経過すればエラーは累積しますが、短時間の場合であればあまり問題がなさそうです。

だから、次のように考えても良いようです。

  1. ティコ・ブラーエは天体観測をする時には、最初に時計の時刻合わせをした。 壁面四分儀で観測するときは時計を 2 個使用した。
  2. ヘヴェリウスの場合も同様。但しヘヴェリウスは 3 個時計を使用し、 その中の 1 つが振り子時計で、 それ以外の時計は種類の違う時計を使用した。
  3. 時計を複数使用するのは「相互チェックにより時計が狂っているかどうかを判定する」ためです。 時刻が狂う理由は時計の種類によって違うはずですから、 種類の違う時計を複数使用すれば相互チェックはかなり効率が良くなります。

だから天体観測に振り子時計のみを使用したわけでなく、 今まで使用してきた機械式時計と併用し、 時計が狂えば時刻合わせをした。

精密時計を最も必要としていたのは天文学者で、 しかも時計が狂っているかどうかの判定は天文学者しかできなかったので、 精密時計の開発は天文観測と手を携えていたと 考えてよいようです。