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以下の文書は次の翻訳です。

Gimbal - Wikipedia

本文中に出てくる「カルダノ・サスペンション」とは「ジンバル」のことです。 原文ではこの箇所が少し意味不明に思えたので、ネットで検索した結果、 「カルダノ・サスペンション」=「ジンバル」であることが判明したのでそのように訳しています。

ジンバル (Gimbal)

ジンバルとはオブジェクトを 1 つの軸の周りに回転させることを可能とする軸受けのことである。 一組の 2 つのジンバルを軸が互いに直交するように搭載すれば、 最も内側のジンバルに搭載したオブジェクトは受けがどのように動いても、動くことがない (動画では垂直のままである)。 例えば、典型的には、船舶の上で、ジャイロスコープ、羅針盤、ストーブ あるいはドリンク・ホルダーまでもジンバルを使用して、船が揺れても水平線に関して、上向きになるようにする。

ジンバルは「カルダノ・サスペンション」とも呼ばれ、 これはイタリアの発明家である ジェロラモ・カルダーノ (Gerolamo Cardano, 1501 年 = 1576 年) にちなんで名前が付けられている。 もっとも彼は自分が発明したとは言っていない。


ジンバルの 3 軸の回転
3 つのジンバルの組を搭載すれば、
横揺れ、縦揺れ、上下の揺れから自由になる
  1. 歴史
  2. 応用
歴史

ジンバルはギリシャの発明家である ビザンチウムのフィロン (Philo of Byzantium, BC 280 年 - BC 220 年) によって始めて発明された。 フィロンは 8 面からなるインク壺を述べており、 それによると各面に開口部があり、傾けても一番上の面にペンを刺して、 インクをしみ込ませることができ、インクは他の面の開口部から漏れることがない。 これはインク壺を中心に吊るすことで可能となり、 インク壺は中心が同じである一連の金属の輪に搭載され、 どのように傾けても壺が傾くことがない。

フィロンによるカルダノ・サスペンションの叙述が本当であるかに関しては、 学者によっては疑問視されていた。 その理由は、ジンバルの使用法を叙述したフィロンの プネウマティカ (Pneumatica) の箇所は 9 世紀のアラビア語の翻訳のみに 残存していたのみだからである。 従って、中国学の ジョセフ・ニーダムは 1965 年に至るまで、 アラビア人に話を作り変えられたのではないかと考えた。 しかしながら、現代の研究者の基礎となるフランス語訳を著した Carra de Vaux はプネウマティカ (Pneumatica) を 基本的には本物とみなしている。技術史の George Sarton (1959 年) も アラビア語版はフィロンの原著の忠実なコピーであるとしてよいと断言し、 はっきりとフィロンによる発明であるとしている。 彼の同僚の Michael Lewis (2001) も、同様な態度を取っている。 実際には Lewis による研究 (1999 年) から、アラビア語版は一連のギリシャ文字を 含んでいることが実証され、 紀元後には、このギリシャ文字は使用されなくなっており、 ヘレニズム時代の原本の忠実なコピーであることが確実となった。 この観点は、古典の権威である Andrew Wilson (2002 年) も 最近共有することとなった。

アウグストゥス (Augustus, BC 30 年 - AD 14 年) の時代に活躍した 古代の著作家である Athenaeus Mechanicus はジンバルのような機械を 「小猿」(little ape, pithêkion) と呼び、 軍事使用を次のように叙述している: 海岸の都市を海から攻撃するには、軍事技術者は城壁攻撃用の機械を 何隻かの商船をつないで城壁に向けることをする。 しかしながら、荒れた海上で船上の機械が動きまわることを防止するためには、 pithêkion を設置しなければならない。 こうすれば機械は常に上を向いている。

訳注
Athenaeus のカナ表記は アテナイオス です。これは同名の人がいたためわかりましたが、 日本語ではこれ以上がわかりません。英語版の Wikipedia からは「セレウキアのアテナイオス」(Athenaeus of Seleucia) と同一人物であることはわかります。 攻城機械に関しての本を書いた人です。
Athenaeus Mechanicus, on Machines (アマゾン)

古代以後には、ジンバルは近東で広く知られることとなった。 ラテン語圏 (Latin West) では、この装置は 9 世紀の 「絵画のためのささいな手引き」(Little Key of Painting, Mappae clavicula) と題した 本に再び登場する。 フランスの発明家であるヴィラール・ド・オヌクール (Villard de Honnecourt) は彼の有名なスケッチブックで一組のジンバルを描いている。 現代の初期には乾式コンパスはジンバルに搭載されていた。


ヴィラール・ド・オヌクールの
カルダノ・サスペンション

近代の乾式コンパスは
ジンバルで支えられていた。

中国では の時代 (BC 202 年 - AD 220 年) の発明家である 丁緩 (Ding Huan) が AD 180 年頃にジンバルの置き香炉を 作成した。 それ以前の 司馬相如 (Sima Xiangru, BC 179 年 - BC 117 年) の著作に ジンバルが紀元前 2 世紀以来、中国に存在していたことが暗示されている。 梁 (南朝) (Liang Dynasty, 505 年 - 557 年) では、ジンバルがドアや窓のちょうつうがいに使用されたことの 言及があり、一方、かって職人が、女帝 武則天 (Wu Zetian, 在位 690 年 - 705 年) に携帯用の暖房炉を献呈しており、 これにはジンバルが使用されていた。 現存する中国のジンバルの実例が 時代 (618 年 - 907 年) の初期の置き香炉に使用されており、 これは中国における銀細工の伝統の一つである。

訳注
  1. Ding Huan の漢字表記「丁緩」は Han Dynasty を参考にしました。
  2. 間宮林蔵が用いた測量器具 伊能忠敬記念館の 杖先羅針盤(彎窠羅針, わんからしん)が登場しています。 伊能忠敬記念館のページではこの装置を「わんからしん」とひらがな表記しています。 色々なページを調べると漢字表記が「彎窠」であることがわかり、 これは「ジンバル」の訳語と思われます。 ( を参照。) 「わんか羅針」でジンバルを除いた部分は「測量技師のコンパス」とか 円周儀と呼ばれる装置です。 この点に関しては円周儀の訳注で解説をします。
  3. 上の記述からジンバルは古代中国に存在していたことがわかります。 日本人はこれを真似せずに、ヨーロッパから流入したものを取り入れた。 古代の日本人は技術面では外国のものをほとんど取り入れようとしていない。 江戸時代になってようやく外国のものを取り入れようとしている。
応用
慣性航行装置

船舶や潜水艦で使用される慣性航行装置では、 最低で 3 つのジンバルが必要で、 これにより慣性航行装置 (安定平面) が、船舶の上下の揺れ、縦揺れ、横揺れを相殺し、 慣性空間で固定状態になる。 この応用では、 慣性計測装置 (Inertial Measurement Unit, IMU) は 3 基の直交方向に搭載したジャイロを備え、 3 次元空間においてすべての軸方向の回転を検知する。 ジャイロの出力はモーターを駆動して、3 つのジンバルの方向を制御し、 これは IMU の方向を維持するのに必要とされる。 更には、3 つのジンバルに搭載されているレゾルバ (resolver) と呼ばれる角度測定装置により 船舶の方向決定に必要となる方向余弦行列の 9 個の余弦の値が提供される。

類似のセンサー装置が航空機でも使用される。

慣性航行装置では、 船舶の回転により、3 つのジンバル・リングのうちの 2 つ回転軸が一つの平面内に そろうと、ジンバル・ロックが起きる。 これが起きると、センサーの方向付けを維持することがもはや可能ではなくなる。

ロケット・エンジン

宇宙船の推進力には、 ロケット・エンジンは一般に 1 対のジンバルの上に搭載され、 単一のエンジンが縦揺れ (pitch) と横揺れ (yaw) の軸の周りに、推進させることが可能であるが、 時には、唯一つの軸がエンジンに提供されていることもある。 回転 (roll) を制御するために、差分ピッチあるいは偏 (かた) 揺れ制御信号を備えた 2 基のエンジン が使用され、ロケットの回転軸のまわりのトルクが提供される。

ジンバルは名詞として使用され、 最も最近の辞書でもそうなっている。 ロケット・エンジンの揺れる動きを適切に表現することができないので、 エンジニアはジンバルを動詞としても使用しだしている。 推進チェンバーが、付属する作動装置で揺れる時に、 この動きを、「ジンバルされた」とか「ジンバルしている」などと言う。 公的なロケットの文書では、この使用法が反映されている。

写真と映像装置

ジンバルは、小さなカメラのレンズから、大きな撮影用の望遠鏡など、何でも搭載される。

携帯用の撮影装置では、単軸のジンバル雲台 (gimbal head) を使用して、カメラやレンズの均衡が取れた動きを可能にする。 これは野生動物などの撮影に便利である。 その理由は非常に長くて重い望遠レンズが使用されるからである。 ジンバル雲台はレンズを重心のまわりに回転され、 動き回るターゲットを追跡する際に、簡単でスムースな操作ができるのである。

2 軸あるいは 3 軸の altitude-altitude 架台の型式を取る非常に大きなジンバルは 人工衛星の撮影に使用され、ターゲットの追跡に使用される。


altitude-altitude-azimuth 架台に載せた
Baker-Nunn の人工衛星追跡カメラ
訳注
alititude-altitude mount は直訳すれば 「高度-高度 架台」(2 軸) ですが、 訳語として適切に見えないので、原語のままとしました。 写真の「altitude-altitude-azimuth mount」を直訳すれば「高度-高度-方位角 架台」(3 軸) です。望遠鏡を搭載する架台としては、特殊な物で、非常に重く天頂付近の観測には都合がよいが、 それ以外には適していない。(写真をクリックして拡大写真を見ればわかる。)