リーフレットの全文を掲載しています。


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一体なんの役に立つのか?

◯ 今の学校に何が求められているのか
 日本の社会はますます複雑になってきています。地域や家庭はますます個人主義の度を高めていると言われます。20年前なら自明のものとして疑うべくもなかった教育理念が理解されなかったり、当たり前のように通用した指導法がまったく効果を持たなくなったりしています(1)。学校は、子どもたちに教育活動を施すというその根本的なレベルで、見直しを行う時期に差し掛かっているのかもしれません。
 こうした状況の変化のなかで、それでもなお学校が社会において「役に立つ」場所であるためには、学校はどうあればいいのか
(2)。それは、粒が揃っているかわりに全国画一的な学校教育をあまねく提供することを超えて、「今、ここ」を生きる子どもたちとその保護者のニーズ(3)に応じた学校教育を展開しようとすることから始まります。自律的な学校経営、創意工夫を生かした教育課程の編成、学校を基礎にしたカリキュラム開発(SBCD(4))などの提案は、そうした文脈のなかで読み取るべきでしょう。このリーフレットで提案するカリキュラム・マネジメントという言葉も、それらの変化を促そうとする試みの一つです。

◯ 具体的に何が変わるのか
 具体的な内容は後回しにしましょう。ともあれ、カリキュラム・マネジメントに基づいて取り組みを進めれば、どういう効果が上がるか。先行的な取り組みが行われた学校で報告されている事柄について列記します。
 
教育面
・学校ぐるみ(5)で子どもたちの教育活動に当たることができる
・子どもたちの成長発達をはっきりと感じることができるようになる
・環境教育やキャリア教育など、教育課程の新しい動向に創造的に対応できる
・保護者や地域の人々の信頼が得やすくなる

経営面
・先生たちが今よりも生き生きと教育活動を行うことができる
・積極的で建設的な学校文化(組織文化)を育てることができる
・学校運営協議会などの新しい学校組織にスムーズに対応できる
・学校評価・関係者評価・第三者評価に、学校改善へと結びつく実質を持たせられる

 あまりにも理想論にすぎると感じるかもしれません。たしかに、これらが実現した学校は「いい学校」だと言えるでしょう。しかし本当に実現出来るのか。カリキュラム・マネジメントとやらにどれほどのことができるのか。こうした疑問を解消するために、次ページ以降で順を追って見ていくことにしましょう。

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(1) いわゆる「モンスターペアレント」の問題も、保護者のモラルや意識といった「個人のレベル」ではなく、学校や教師に対する社会的評価の変化といった「社会のレベル」で捉える必要があるかもしれません。
(2) 私たちの社会を構成するフレームワークが大きく変貌するなかで、「もはや学校は旧時代の遺物であるのだから、無くなってしまえ!」という極端な議論もあります。しかし私たちは、ひとまず学校という制度が今後も続いていくとして、そのなかで学校がどのように「変化」していくべきかについて考えていくことにします。
(3) 「ニーズ」に応じることと「迎合」することとは全く別問題です。経済システムにおけるニーズと違い、学校教育におけるニーズはつねに価値観を伴います。平たく言えば、学校が子どもたちに「こう育って欲しい」という「必要」も、保護者が我が子を「こう育てたい」という「要求」も、子どもが「こう育ちたい」という「欲求」も、すべて教育的な意味での「ニーズ」に含まれます。三者の「ニーズ」の接点で教育活動を行うことはもちろん理屈で整理するほど簡単なことではないでしょう。しかし少なくとも、そういう意味での「ニーズ」のあり方を十分理解しておく必要はあります。
(4) School Based Curriculum Developmentの略称。スキルベック(Malcolm Skilbeck)という教育学者が理論的な整理を行ったようです。詳細は田村知子先生佐藤真先生に丸投げ!
(5) ここでいう「学校ぐるみ」として、教職員全員が教育理念を完全に共有し、一枚岩となって教育活動に当たる理想状態を想定すると、かえって学校改善の身動きが取れなくなってしまいます。むしろ逆に、教育というきわめて複雑な営みの主体である先生たちが、「一致結束箱弁当」(言い回しが古い!)であることを想定しないことから学校改善をスタートさせなければならない、と言うべきかもしれません。教育の理念と方法のベクトルと一本に揃えようとするのではなく、いわゆるラガード(最後まで変化に加わろうとしない人々)を含み込みながら、全体としていかに改善のベクトルを生み出すかを考えるほうが、むしろ現実的ですし、生産的であるとさえ言えます。具体的な中身は、11ページをお読みください。
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